2006年 04月 01日
【MotoGP】第1戦 スペインGP レビュー その2
(続き)

ロッシは転倒して最下位に沈み、ジベルノウはマシン・トラブルでリタイア。
主役であるはずだった2人が僅か2周で戦線離脱する波乱の幕開け。
トップのカピは独走態勢を固めつつある。
レースはひどく退屈な展開になりそうな予感がした。
あれだけ楽しみにしていた開幕戦なのに、なんかガッカリ。

でも、そんな危惧は無用だった。

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2006年シーズンはカピロッシの独走で幕を開けた
Photo (C) crash.net / Yahoo!ITALIA




乱世に救世主現る

レースはカピロッシがリード。2位メランドリ、3位ヘイデンの順で3周目に突入。ハイペースで飛ばすカピロッシがジリジリと後続を引き離しにかかる。メランドリはどうもキレが無い。そう言えばテストでも決して好調とは言えなかった。

4周目。ペースのあがらないメランドリをヘイデンがパスして2位に浮上。メランドリに替わってカピを追う。でもそのヘイデンも期待していたほどペースがあがらない。4周が終わった時点で、既にカピロッシとの差は2秒にまで開いてしまった。

ブリヂストンとミシュランの差なのかな? それとも、まさか目標だったロッシが脱落して気が抜けちゃったか? ロッシが居なくなった今こそチャンスだろうに。
この分じゃぁ、多分カピが最後まで逃げ切るだろう。あとはダラダラとマルコメとヘイデンのどんぐりの背比べ見物かい? 去年はロッシとジベのハイレベルなバトルで大興奮だったのになぁ。

ほんの数分前まで感じていた、開幕戦ならではの高揚した気分がスーっと体が抜けていった。

が、ものの1分と経たないうちに再び湧き上がってきた。ペドロサだ。

緊張していたのかどうか分らないけど、スタートは上手くなかった。マルコメ、エリアス、ロッシ、ストーナーらに抜かれて、グリッド5位から一気に後退した。でも1コーナーの混乱を運よく交わして1周目終わりでは7位。そして2周目にはジベルノウがリタイアして6位に上がり、3周目には中野を、4周目にはストーナーを交わして4位にまで上がってきた。そして5周目には遂にマルコメまでパス。あっと言う間にヘイデンの背後まで迫ってきてたよオイ。

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なんかもうね、オーラが違ってたよ。
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もう完全にテール・トゥ・ノーズ。と言うか、明らかに両者の勢いが違う。ヘイデンが煽られてる。
そして7周目。バックストレートエンドで狙い済ましたようにズバっとインに切り込み、クロスラインから立ち上がった時にはヘイデンの前に出ていた。

もうね、ペドロサキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!ってなもんですよ、えぇ。

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あのブレーキングは上手かった!
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シーズン後半ぐらいには表彰台もあるかなー、とは思ってたものの、まさか開幕戦からこんだけ走れるとは思わなかった。すんげぇぞ!ダニ!

さぁここからレースは完全に ペ ド ロ サ ・ シ ョ ー 。

今季、ロッシのライバルになると目されていたマルコメとヘイデンの2人を軽く料理した勢いで、2秒先を逃げるカピロッシを追いかける。

7周目終わりに2.254秒。
8周目、1.780秒。
9周目、1.341秒。

見た目にハッキリと両者の差が縮まってきているのが分かる。
ペドロサが眼前を通り過ぎるのに合わせて立ち上がって声援を送る13万の地元大観衆。自然発生的に生まれたウェーブは、まるでペドロサと一緒にカピロッシを追いかけているようだ。

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マーシャルも仕事忘れて大声援!
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10周目、1.141秒。
11周目、1.119秒。
12周目、0.780秒。

遂に1秒を切った。もはやカピは射程距離。冷蔵庫から2本目のビールを持ってくる。

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ペドロサと一緒に観客席のウェーブがヘレス・サーキットを周回していく
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13周目、1.110秒。
14周目、0.974秒。
15周目、0.767秒。
16周目、0.558秒。

そして17周目終わり、両者の差は0.280秒! 完全にカピのテールに張り付いた。

いやぶったまけだ。マジでカッコイイぞ、ダニ!
こうなりゃもうデビュー・ウィン決めるしかないだろう!いけーーーーーー!

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つーかまーえたっ!でも、もう疲れた・・・
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が、ペドロサの健闘もここまで。
スタートで出遅れたところから頑張って追いかけてきたために、ペドロサにはもう、巧みなライン取りでブロックするカピロッシをパスできるだけの体力もタイヤ・グリップも残っていなかった。
コンマ3.5秒前後の差を保ちながら3、4周ほどランデブー走行を続けた後、タイヤを温存していたカピがここぞとばかりにラストスパート。見る見るうちにペドロサとのギャップを広げていき、見事、2006年最初のチェッカーを受けた。

デビュー・ウィンは果たせなかったものの、チーム・リーダーのヘイデンを6秒も後方に置き去りにして見事表彰台を獲得した。

今年の開幕戦のMV“R”(Most Valuable "Rider")は紛れもなくペドロサだった。


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今年のスペインGPの主役は間違いなくアナタでした
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ルーキーであってルーキーじゃない
D・ペドロサ「このような形でシーズンをスタートできて、自分でも驚いている。ウインターテストから精一杯がんばってくれたチームと、素晴らしいタイヤを提供してくれたミシュランに感謝したい。」(ホンダ公式サイト)

今オフ、ペドロサは順調にテストを消化してきたものの、出てくるコメントと言えば「体力的にキツイ」とか「まだ練習が必要だ」とか、加熱する周囲の期待を牽制するようなものばかり。だから、シーズン後半はともかく、序盤はいいとこセカンドグループあたりかなぁ、と思っていた。
ところが蓋を開けてみれば、ロッシとジベがいなくなった幸運があったとは言えいきなり表彰台ゲット。おいおい、マジかよ?ってなもんですよ。ペドロサのパフォーマンスは想像以上だった。
D・ペドロサ「レース終盤にはタイヤがスライドしていたし、自分自身とても疲れていた。そのような状況の中、今日の結果はとても良いと思う。スタートはあまり良くはなく、順位を上げるのに時間がかかった。カピロッシはすでに逃げていたので、追いつくために最大限プッシュしたが、そのために疲れてしまった。彼はタイヤを温存していると思っていたし、優勝を狙おうとは思わなかった。レース終盤で彼はペースを上げ、僕のタイヤは少し滑り始めていた。抜ける自信がなかったので、完走することに専念した。今日の結果にはとても満足している」(ホンダ公式サイト)

デビューレースでこれだけ冷静に状況を把握して、気負うことなくキッチリ結果を出してくるんだから本当にたいしたもんだ。ペドロサの最大の武器は何と言ってもこのクレバーさだろう。

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Photo (C) Reuters / Yahoo!ESPANA


かつてヘレスで滅法強かった同じスペイン出身のライダーがいた。1999年のチャンピオン、A・クリビーレだ。クリビーレもクレバーなライダーだった。でもちょっと脆いところもあった。脆さはジベルノウ、クレバーさはペドロサが継いだって感じ?
同じレプソル・カラーだったこともあるし、ちょっと気が早いかも知れないけど、今回のペドロサはちょっとクリビーレと姿がダブって見えたね。

レプソルと言えば、今季はチームリーダーとして気合が入っていたはずのヘイデン。ルーキーのペドロサに抜かれた時の心境はいかばかりだったか?

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Photo (C) crash.net / Yahoo!ITALIA

N・ヘイデン「昨年は転んでしまったから、好リズムで走れて完走できたのは良かった。2周間前のテストでは可能性が全く見えなかったけど、僕たちは大きなステップアップを果たした。チーム、ホンダ、レプソル、ミシュランに感謝したい。進歩に向けてまだまだたくさんの仕事が控えている。」(motogp.com)

ヘイデンはペドロサと違ってマシン開発という責任も負ってる。他のホンダのライダー達とは一人だけ違う仕様だったとか。
田中ホンダ監督「ニッキーは、これまでのウインターテストでマシンの開発に多くの時間を費やさなければならず、十分な乗り込みができないまま開幕戦を迎えてしまった。しかし、今日は彼の持つ実力を十分に発揮し、最後までアグレッシブかつ冷静な走りで表彰台に立ってくれた。ニッキーのがんばりにも心からお礼を言いたい。」(ホンダ公式サイト)

N・ヘイデン「何人かのライダーがリタイアしての3位なので素直には喜べないが、表彰台と16ポイントを獲得することができた。去年はクラッシュしているので、今日の結果は今後の弾みになるはずだ。」(ホンダ公式サイト)

チームボスもこう擁護しているように、3位でも存外の結果だったんだろう。だとしたらしょうがないかぁ、とも思うけど・・・

でもやっぱりちょっと物足りませんわな。特にペドロサに最終的に6秒近い差をつけられたっていうのはちょっと不甲斐なくないかい?
ガードナーだってローソンだってドゥーハンだって、マシン開発の任を追いながらチームリーダーとしての責も立派に果たしてた。今や、彼らと同じワークス・ホンダのエースというポジションにいるんだからさ、もっともーっと頑張ってちょうだいよ。

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頭の高さだけ見ると、どっちが2位でどっちが3位か分からんね。
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同じくもっと頑張って欲しかったのがもう一人。マルコメ君、君だよ。
レース序盤にして早々に失速。カピにもレプソル2台にも全くついていけず5位に沈んだ。
M・メランドリ「とても厳しいレースだったが、何とかポイントを獲得することができた。ウオームアップに行ったセッティング変更は、前進するどころか、少し後退してしまった。決勝レースでは良いスタートを切ることができたが、プッシュし過ぎることで、リスクは犯したくなかった。まだマシンのフロントには満足していないので、これから取り組みたいと思う。」(ホンダ公式サイト)

う~ん、厳しい状況だったみたいねぇ。でもさぁ、昨シーズン・ラスト2戦で連勝しただけに、やっぱりみんな君に期待してるわけだよ。打倒ロッシをさ。
幸いロッシは今回14位に沈んだことで幸先良くポイント・リードを得ることはできたけど、滅多に無いこういうチャンスは最大限活かさないと。なんたって相手はあのロッシなんだから。モタついてると、あっと言う間に帳尻合わされちゃうぞ。

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マルコメもヘイデン同様、新加入の後輩に負けちった。でも今回はメランドリを責めるより、エリアスを褒めた方がいいのかな?
ペドロサが“MVR”だとすれば、エリアスは敢闘賞か殊勲賞って感じだな。まず、ロッシを撃墜したのは見事だった(笑)。そしてなにより、ロッシを撃墜した後、ペドロサに負けず劣らず素晴らしいレースを展開したこと。

ロッシに追突して帰ってきた1周目は13位にまで沈んでしまった。でもそこからは本当にスゴかった。
2周目に11位。3周目に10位。4周目に9位。8周目に8位。9周目に7位。そして13周目には一気に5位にジャンプアップし、そして16周目にはメランドリをもパス。
時にトップのカピロッシ以上のタイムを出しながら、すさまじい勢いで追い上げをみせてくれた。あるいは、あのロッシとの接触が無ければ表彰台も十分イケただろう。
T・エリアス「とても厳しいレースだったが、レース人生の中でもベストのレースだった。バレン
ティーノには申し訳なかった。今日は、みんな良いスタートだったし、集団で第1コーナーに進入した。中野真矢を避けようと思ったら、バレンティーノと接触してしまった。レースではこのようなことがよく起きるが、レースの後に謝罪した。今日は良いリズムを見つけることができたし、精一杯努力したのに、表彰台に立てなかったのは残念だった。それでも結果には満足している。きっとレースファンたちも今日はエンジョイしただろうし、彼らに感謝したい」(ホンダ公式サイト)

感謝するのはこっちの方でやんす。大満足させてもらいやした。

ヤマハで苦労した末のホンダへの移籍。まさにチーム・リーダーのマルコメが昨年描いてみせてくれた成功への構図。今回はその構図がまたも見事にハマった感じ。今年、エリアスが再びこの構図の効果を証明してくれるかな?

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エリアスもブレイクするか?
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それと、予想以上の大活躍した新人と言えばもう1人いる。ストーナーだ。
ストーナーはオフ中の怪我でほとんどマシンのテストができていない。だからMotoGPマシンでどのくらいのポテンシャルを見せてくれるのか全然見当がつかなかった。それが蓋を開けてみればこのポジション。まだシーズンも序盤、たかだか1戦終わったぐらいでちょっと大ゲサな気もするけど、大健闘だったはことは違いない。
C・ストーナー「3月の合同テストに参加することができなかったので、こんなに嬉しい結果は予想していなかった。素晴らしい走りで2位を獲得したペドロサにおめでとうと言いたい。初めてのMotoGPレースは厳しかったが、肩のケガは問題なかった」(ホンダ公式サイト)

母国オーストラリア出身の偉大なチャンピオン、M・ドゥーハンも、GPデビューした1989年はゼッケンナンバー「27」をつけていた。第2戦以降も大先輩に負けないレースをしてね。

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ストーナーもポテンシャルは高そうだ。オーストラリアに第2の黄金期がやってくるか?
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で、ロッシさんは?

そう言えば、ペドロサ、エリアス、ストーナーの3人はいずれもホンダですな。

1年前、ロッシに敗れて「去年と何も変わっていないことを実感する1日だった。ライバルはロッシだけ。」という名言を吐いた田中ホンダ監督。今年は・・・
田中ホンダ監督「まだシーズンは始まったばかりであり、やらなければことはたくさんあるが、今年は常にRepsol HondaTeamのライダーが表彰台の真ん中を競っているようなシーズンにしたい。今日は良いシーズンのスタートを切ることができた」(ホンダ公式サイト)

おぉ、1年前と違って随分強気に出てきたぞぉ。そりゃそうだ。天敵ロッシが今回のレースで14位に沈んだだけじゃなく、どうやら大きな問題も抱えていそうなんだから。
V・ロッシ「難しいレースになることはわかっていたことだが、ここまでのことになるとは思わなかったよ!エリアスがインに寄ってくるのが見えて、次の瞬間にはもうぶつかっていた。
再スタートしてからはアレックス・ホフマンといいバトルができたけど、開幕戦はどうしても勝ちたいと思っていたからやっぱり残念。でも、こればっかりはどうしようもないね。こういうことが2度とないように仕事に励むだけ。次のレースを楽しみにしてるよ」 (ヤマハ)

どうやらマシンは依然としてバイブレーションの問題を解決できていないらしい。テストでは絶好調とアピールしていたけど、あれは何だったのか?

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腐らずに最後まで走ったロッシは偉いと思った。いや、それこそがロッシの執念か?
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いずれにしてもロッシが開幕戦で躓き、出遅れたことはGPファンにとっては悪いことじゃない。おかげで、これからロッシの本気走りが何度と無くみられるようになるはずだもの。(ごめんね>ロッシ)

追われる身から追う身へ。長らく、追うロッシ、というのを観ていなかったような気がする。さてどんな反転攻勢をこれから観せてくれるだろう。そう考えると、なんかとっても楽しみ。


最後にまとめて

カピロッシおめでとー! 主役はペドロサに持ってかれちゃったけど、勝ったのはアナタだ。ポールからホールショットを獲ってそのまま最後まで逃げ切った。パーフェクト・ウィン。
今季はこのまま突っ走って、悲願のタイトル手が届くかな?

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それと、我らが日本人ライダーだけども・・・

ま、心機一転、次のカタールで頑張って!


あとジベルノウは・・・・
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by oretch | 2006-04-01 10:33 | MotoGP

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