2006年 11月 17日
【MotoGP・WRC】ロッシ・ファンのためのWRC解説
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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
インプWRカーのコックピットに座ってご満悦のヴァレ。


はじまっちゃったよ、ラリー・ニュージーランド。

MotoGPもF1もシーズン終了した今、ロッシが再びWRCにエントリーするってんで、たぶん世界中のモータースポーツファンが注目してるに違いない。
ニュージーランドも国を挙げて盛り上げてるし(とまで言うのはちょっと大げさ?)

ニュージーランド政府観光局 : 史上最強のライダー、バレンティーノ・ロッシがWRC(世界ラリー選手権)に参戦 (2006/10/13)
「日本でもヤマハの契約ライダーとしてお馴染みのバレンティーノ・ロッシ(27歳)は、来月開催されるWRC(世界ラリー選手権)のひとつ、第36回プロペシア・ラリー・オブ・ニュージーランドに参戦することが決定しました。ロードレース世界選手権参戦以来10年間で7回のワールドチャンピオンを獲得しているロッシが、ついに二輪ではなく四輪で参戦することになります。今回はプロドライブ社でラリー仕様に改造されたスバルのインプレッサに乗り、その腕を競います。」

政府機関が「史上最強」なんて煽りの言葉を使っちゃうところがちょっとお茶目。「ついに二輪ではなく四輪で」なんてところは勇み足っぽいけども、それだけ期待ムンムンってことなんだろう。

そんなロッシのWRC参戦だけども、ここ日本ではWRCはまだ地味な存在だけに、ロッシがいかに大胆なチャレンジをしているのかイマイチ、ピンと来ない2輪ファンの方が多いと思われ・・・。

それってちょっともったいないとも思う。

とうことで今回は、「ロッシ・ファンだけどWRCがよく分からない」という方々向けに、WRCについてご説明してみようかと思います。余計なお節介ですが。

WRCについて自分なりにまとめてみるいい機会でもあるし。
まだバレンシアGPのレビューもセテの引退もラリー・オーストラリアの結果も書いてなくて(文章は書き終わってんだけどアップする暇が無かった)順序がバラバラになっちゃったけども、書くなら今書いとくしかないし。


前置き長・・・


この記事のコンテンツ一覧
 ■ WRCとは
 ■ WRCのコース
 ■ WRカーとは
 ■ ペースノートとコ・ドライバー
 ■ イベント・フォーマットとスポーティング・ルール
 ■ スーパーラリー・ルール
 ■ ロッシとラリー
 ■ そしてオレッチのロッシ成績予想





■ WRCとは

「WRC」は“World Rally Championship”の略。日本語にすると世界ラリー選手権。2輪のFIMに相当するFIA(国際自動車連盟)が直轄している「世界選手権」は2つしかなく、F1とWRCがそれにあたる。一言で言えば、F1と双璧を成すもう一つの4輪モータースポーツの頂点。
レースの頂点がF1で、ラリーの頂点がWRC、といえば分かりやすいかも。

2輪GPとF1がレース専用のマシンで戦うのに対して、WRCは市販車を改造した車両を使う。改造範囲によって異なる仕様の競技車両が混走する。最も改造範囲が広く、「見た目は市販車、中身は別物」なのがWRCの頂点にある「WRカー」。いわゆるワークス・マシンだ。ロッシは今回、1年落ちのスバルのワークス・マシン、インプレッサWRCでエントリーする。
(詳細は「WRカーとは」参照)

また、一般道を使って競技を行う点も2輪GP、F1と大きく異なる点。一般道の一部を閉鎖し、一般車の立ち入りを禁止して競技を行う。
(詳細は「WRCのコース」参照)

シーズンは2輪GPやF1よりも長く、今季は1月の開幕戦モンテカルロ・ラリーに始まって、12月の最終戦ラリーGBに至るまるまる1年間、全16戦が開催される。終わったと思ったらすぐまた次のシーズンが始まるので、毎年のように各エントラントから「開催数を減らしてくれー!」と声が上がるけど、WRC人気は年々上昇しているので、たぶん当面、減ることはないだろうね。
昨年、F1とのバッティングを避けるために「ウィンター・リーグ化」(8月にスタートして翌年5月に終わる)することが一度は決定されたものの、いつのまにか反故にされちゃったなんてこともあったね。

まとめると、WRCとは「世界中のあらゆる公道を舞台に戦われる最も過酷な世界最速決定戦」なのである。

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Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA
公道最速世界一決定戦。それがWRCだっ!



■ WRCのコース

WRCでは世界中のあらゆる道路が戦いのステージになる。

普段オレッチたちも走るアスファルト路面はもちろん、砂利道や泥道、雪道、アイスバーン、岩が剥き出しの山道など、とにかくどんな道でもコースになる。

またコースの設定されている環境も苛酷だ。ヨーロッパの片田舎の農道や、北海道の原野を駆け巡る林道のような比較的“ふつう”のコースもあれば、酸素の薄いアンデス山脈の山岳地帯や氷に凍てつく北欧の奥深い森、さらにはオーストラリアの灼熱の砂漠地帯などなど、とにかく世界中のあらゆるステージで戦われる。
陸軍の演習地の中に設定されたコースなんてものもあったりするし。(もちろん砲弾が飛び交う中で競技するわけじゃないけどね)

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Photo © Subaru World Rally Team
デンジャラスで名高いチュリニ峠。なにもこんなところで、ってところでも戦うWRC。


ラリーの世界では、舗装路のことを「ターマック」、非舗装路のことを「グラベル」と分けて呼ぶ。今季は全16戦中、ターマック・イベントはスペイン(カタルニア)、フランス(コルス)、ドイツの3戦のみ。あとは全部グラベル(モナコはアイス、スウェーデンはスノーとも呼ばれる)。近年はF1との差別化を意識しているのか、グラベル・イベントを増やす方向にある。オレッチみたいに、“リアル頭文字(イニシャル)D”とも言えるターマック・イベント好きにはちょっと寂しい。

ちなみにロッシが今回エントリーするニュージーランドは、日本に良く似た景色の美しい丘陵地帯にコースが設定されたグラベル・イベント。


■ WRカーとは

競技車両は改造範囲別に何種類かの仕様に分かれていて、主なものは「WRカー」と「グループN」の2種類。(ここではJWRCやPCWRCのことは省略)

最も改造範囲が広い「WRカー(ワールド・ラリー・カー)」は、エンジンから駆動方式から、とにかくほとんどあらゆるところを改造できる。スバルやシトロエンといったマニュファクチャラーが投入しているワークス・マシンは、全てのこのWRカーだ。スバルはインプレッサ、シトロエンはクサラ、フォードはフォーカスといったミドルクラスのクルマをベースにWRカーを造っている。
改造範囲が広いために、各マニュファクチャラーとも、その名誉と威信とウン十億円というお金をかけて毎年WRカーの開発競争に凌ぎを削っている。その結果生まれてくるWRカーは、レギュレーションによって見た目は市販車の面影を色濃く残しているものの、中身は全く別物になっている。
2輪レースに例えると、同じく市販車を改造したスーパーバイクみたいなものだけど、メーカーの気合の入れ方とステイタスからするとMotoGPマシンと同等と考えるのが正しい。

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Photo © Subaru World Rally Team
スバルのワークス・マシン、インプレッサWRC2006


WRカーは全て4輪駆動方式(4WD)を採用している。砂利や雪を掻き分けて走るにはやっぱり4WDじゃないとね。
エンジンはやはり全車2リッター・ターボ。パワーは意外に小さくて300馬力を超える程度。市販のスポーツカーはおろか、僅か990cc自然吸気のMotoGPマシンともたいして変わらない。これはレギュレーションによって、パワーを制限するためのリストリクター(吸気制限器とでも訳す?)の装着が義務付けられているから。それでも、全ての車輪に駆動がかかる4WDと組み合わせることで、スタート・ダッシュの速さはかつて「F1より速い」と言われたくらい。

今回ロッシが乗るマシンはスバルの用意したWRカー「インプレッサWRC2005」。1年落ちとは言え、昨年WRCで3勝をマークしたバリバリのワークス・マシンだ。
ワークス・マシンという強力な武器を得て、ロッシが百戦錬磨のラリー・ドライバー相手にどこまで戦えるか楽しみだ。

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Photo © Subaru World Rally Team / nifty
これがロッシの乗るインプレッサWRC2005。最大航続距離45mの性能を誇る。



■ ペースノートとコ・ドライバー

WRCは1イベントで300km以上を走破する(移動路を含めると1,000km以上)。ラリーはサーキット・レースと違い、同一イベント中に同じコースを2度走ることはない。毎回、毎コース異なっている。となると、とてもじゃないけどコースを一つ一つ覚えてなんかいられない。

そこで登場するのが「ペースノート」。ストレートの長さやコーナーのR、路面の状況など、コースの特徴を克明に記したノートのこと。これを、ラリー本番前に行われる「レッキ」と呼ばれるコースの下見走行時に作成する。
山道や林道などに設定されるラリー・コースはブラインド・コーナーだらけ。ドライバーは競技中、このペースノートを頼りに次のコーナー、さらにその次のコーナーを頭にイメージしながら走ることになる。だからこのペースノートに誤りがあると、後でとんでもないことになる。

ちなみに、断崖絶壁の峠道をオーバー100km/hでブっ飛ばしているような時に、「次は右コーナーでRは120、そんでその次は・・・」なんてノンビリ読んでなんかいられないので、ペースノートの中身は、まるで暗号か何かのように簡潔に書かれている。例えばこんな感じ。
Start, 30, Keep left over a crest into short 4 right plus opens, 60, crest and 6 right plus and don't cut short 6 left minus
スタート、直線を30m走り、左側をキープ、クレスト(※ジャンプ・スポット)を越えた後、短い4速の右コーナーへ入る。直線60mは加速し、クレスト、それから6速で道の中央をキープしてハーフスロットルで左コーナー
(Subaru モータースポーツより)


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Photo © Peugeot Japon
これはフォードのエース、グロンホルムがプジョー時代に使っていたペースノート。


でも高速走行中にドライバーがペースノートなんか読んでいる暇があるわけない。で、次に登場するのが「コ・ドライバー」。競技中、助手席に座ってペースノートを読み上げる。ドライバーは、コ・ドライバーがペースノートを読み上げる聞きながら、次々と現れるコーナーをクリアしていくわけ。

当然ながら、ドライバーとコ・ドライバーのコンビネーションの良さはとっても重要。名ドライバーの傍らには、長年コンビを組んでいる名コ・ドライバーが必ずいる。

今回ロッシがコンビを組むコ・ドライバーは、かつてヨーロッパ王者にもなったことのあるベテラン、C・カッシーノだ。WRC王者M・ビアシオンのコ・ドライバーとしてWRCで優勝したこともある(と言っても1戦限りだけど)。
ロッシとは2002年のラリーGBをはじめ、これまでずっとコンビを組んできた仲だし、ま、2人のコンビネーションに問題は無いだろう。

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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
レッキ中のロッシとカッシーノ。STiのシャツ着て、すっかりスバルの人になったヴァレ。



■ イベント・フォーマットとスポーティング・ルール

ラリーのスケジュールは、おおよそ次のようになっている。(イベントによって多少異なる)
以下、スケジュールに従って説明します。
~前日(水曜日) レッキ
1日目(木曜日) レッキ、シェイクダウン、セレモニアル・スタート
2日目(金曜日) レグ1
3日目(土曜日) レグ2
4日目(日曜日) レグ3、セレモニアル・フィニッシュ

レッキ: 下見のこと。ドライバーとコ・ドライバーがレッキ専用のクルマでコースを試走し、過去のデータや気象予測も加味しながらペースノートを作成する。

シェイクダウン: マシンの最終調整セッション。専用に用意されたコースで、最後のマシン調整やタイヤ選択などを行う。2輪GPのフリープラクティスのようなもの。たまにここで気合入りすぎてクラッシュしちゃうドライバーもいる。

セレモニアル・スタート: 2輪レースファンなら、8耐などで行われるスーパーポールのスタート儀式をイメージすると分かりやすい。出走するマシンが1台1台壇上に登って、ドライバー紹介などが行われる。2輪のスーパーポールでは儀式後タイムアタックに入るけれど、WRCではあくまでも儀式。チョロっと近場を走ったら、すぐにサービスパーク(2輪GPのピットとパドックを足したようなところ)に戻ってくる。

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Photo © Peugeot Sport / Nifty
伝統と格式を誇るモンテカルロ・ラリーのセレモニアル・スタート。(2004年)

レグ1~3: 競技本番は金曜日から日曜日の3日間に渡って行われ、初日から3日目までを「レグ1」「レグ2」「レグ3」と呼ぶ。

セレモニアル・フィニッシュ: スタート時と同じようにフィニッシュ時も、完走したクルマが1台1台壇上に登って、集まったファンから完走の栄誉を讃えられる。2輪GPでは表彰式でシャンパン・ファイトを行うけど、WRCではこのセレモニアル・フィニッシュ時に優勝コンビが自分のマシンのボンネットに登ってシャンパンをぶちまけるのが恒例。

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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
今年のツール・ド・コルス(フランス)でのセレモニアル・フィニッシュの様子。


次にスポーティング・ルールについて。

WRCも速さを競うという点については2輪GPと同じだけど、その競い方が異なっている。2輪GPでは全車がヨーイドンで一緒に走って、最初にゴールしたライダーが勝ちだけど、WRCでは1台ずつ単独でコースを走行し、その合計タイムで争われる。具体的には、イベントごとに20~30箇所前後設定される「SS」と呼ばれる競技区間のタイムをそれぞれ計測し、その合計時間が最も短かかったクルマが優勝となる。言わば、1イベント内でBMWアワードやっちゃうみたいな感じ。

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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
ライバルとのタイム差を考えてリスクを計りながらアタックする。まさに神経戦。


SSとは「Special Stage」の略。最初に書いたように、一般道の一部を閉鎖して使う。3km弱の短いもの(ショート・ステージ)から、50kmを超えるもの(ロング・ステージ)まで様々。1レグ(1日)あたり5~10箇所のSSが設定され、3レグ(3日間)合計で20~30箇所になる。
最近は、広場や河川敷などの広い場所にスタートからゴールまで一望できる特設コースを造って、そこで2台同時にスタートして競わせる「SSS(Super SS)」を設置するイベントも多い。まるで2輪のスーパークロスのように、巨大スタジアム内にSSSを造った例もある。

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Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA
巨大なオリンピック・スタジアムに設置されたSSS。(@アクロポリス・ラリー)


SSのほかに、コースにはもう一つ「ロードセクション」(またはリエゾンと呼ばれる)と呼ばれる区間がある。SSとSSをつなぐ移動用の一般道部分で、ロードセクションは区間閉鎖しないため、一般車と一緒に並んで走ることになる。当然、ロードセクションでは開催国の交通法規に則って走行しなければならない。なので、ワークスのトップドライバーがスピード違反で地元の警察に捕まるなんてこともしょっちゅうある。

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Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA
ロードセクションはファンとの触れ合いの場でもある。信号待ちでファンに取り囲まれるソルベルグ。


移動用の一般道区間とは言え競技と全く関係無いわけじゃなくて、SSのゴールから次のSSのスタート地点までなど、決めら場所に決められた時間(オーダー)で到着しなければペナルティ・タイムを課せられてしまう。SS区間で岩や木にヒットしたりしてトラブルを抱えたマシンにとっては、このロードセクションはSS以上に辛いセクションになる。
また、遅く到着した場合はもちろん、早く着き過ぎてもいけないのがロードセクション。なのでドライバー達は到着地点直前まで早く行って、そこで指定された到着時間までインタビューを受けたりしながら待っていたりする。

また、ロードセクションではドライバー自らマシンを修復する姿がよく見られる。マシンの修復場所としては、2輪GPのピットとパドックを一つにしたようなサービスパークというところがあって、そこまで戻ることが出来れば、WRCメカニックたちの神業のような修復テクニックによって、たとえ大破したマシンでもたちどころにピカピカの新車状態に復活できる。
でも、サービスパークに戻っていい時間は決められているため、それ以外の場合はドライバーとコ・ドライバーが自らマシンを直さなければならない。パンクしたタイヤの交換は序の口。スパナやレンチを持って、サスペンションやギアを直さなければいけない場合もある。

ニュージーランドでは、ロッシがスパナを持ってマシンを直す姿が見られるかもね。

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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
タイヤ交換するローブ。チャンピオンだって自分でやる。



■ スーパーラリー・ルール

2輪GPではマシンがぶっ壊れてストップしたらそこで終わり。リタイアになる。それはWRCも同じ。ただし、それは以前のこと。

今のWRCには「スーパーラリー・ルール」と言うのがある。マシンが壊れてリタイアしても、次の朝までにマシンを直せれば、ペナルティ・タイム(2分)を加算された状態で再び競技に復活できるという非常に便利なルール。ラリーは3日間の合計タイムで争われるので、トップドライバーが初日にクラッシュしたりするとファンとしてはガッカリ。そんな事態に対処して制定された。

ロッシは2002年にラリーGBに参戦したとき、イベント・スタート直後のレグ1のSS2でクラッシュ。僅か20kmちょっと走っただけで早々にリタイアしてしまった。もしあの時もこのスーパーラリー・ルールがあったなら、ちゃんと最終日のレグ3までゼッケン「46」がコース上を走り続けることが可能だったのにね。

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Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA
さすがにこうなっちゃうともう無理・・・。



■ ロッシとラリー

ここまではラリーとはなんぞや、という解説をしてきた。まとめると、「山あり谷あり川ありの一般道でタイムアタックを繰り返しながら、その合計タイムで競う世界最速決定戦」となる。

で、ここからはロッシの方にフォーカスしてみる。

ロッシのラリー好きは今更説明の必要がない。02年には既に一度、WRC最終戦のラリーGBに参戦したことがあるし、ここ数年は毎年オフに地元イタリアのモンツァ・ラリー(国内ラリー)に出場している。
ラリーGBでは、当時最強を誇った傑作車プジョー206のセミワークス仕様をミシュランが用意し、モンツァ・ラリーではトヨタやスバルがワークス・マシンを貸し出していた。
いくらロッシがスーパースターとは言え、バリバリのワークス・マシンを貸与するなんて破格の待遇としか言いようが無い。シューマッハがMotoGPに出たいと言ったところで、いくらドゥカティだってデスモを貸し出したりはしないわなぁ、フツウに考えて。

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Photo © Gazzetta Dello Sport
2002年のラリーGBに出場したときのロッシ。マシンはセミワークス仕様のプジョー206.


各メーカーがそれだけロッシを厚遇するのは、もちろん第一にはその突出した人気っぷりなんだろうけど、同時にロッシのドライバーとしてのポテンシャルをそれなりに認めているからに違いない。

ロッシのドライバーとしてのポテンシャルが顕在化したのは、実は案外古くて1998年(99年だったかな?)にまで遡る。「レース・オブ・チャンピオンズ」(毎年末パリで開催される4輪レースのイベント。現役F1ドライバーとWRCドライバーが多数出場して世界一決定戦を行う)がまだカナリア諸島で開催されていたころ、メランドリら2輪仲間と出場して、ドリフトしまくりのバギー・レースで現役WRCドライバー相手に互角の勝負をして見せた。

その後は上記のように毎年オフに精力的にラリー・イベントに参加して、着々と実績を作ってきたし、さらにはF1でもその非凡な才能を見せつけたことで、今では4輪関係者もロッシの一挙手一投足に注目している。

・・・・といった背景が、今回の破格の待遇ということになったんだろうね、やっぱし。


■ そしてオレッチのロッシ成績予想

つーことで、最後にロッシの成績予想をしてみよう。

フツーに考えれば、完走できたら大したもんだ、っていうところだろうね。やっぱし。

ま、スーパーラリー・ルールがあるから、よっぽどマシンが大破しないかぎり完走はそれほど難しいもんじゃないだけどね。でも高速グラベルのニュージーランドは大クラッシュしやすいから、ちょっと油断したらとんでもないことになる。

とは言え、いくらロッシでも本業のことを考えてそれほど無茶な走りはしないだろうから、初日からリスクを取らずに慎重に走り、プライベーターのトップ勢に次ぐぐらいのポジションでフィニッシュ、というのが一番ありそうな結果だね。

いやいや、WRカーで走るんだし、なんたってロッシだし、そんな平凡な成績じゃ終わらないはず! と期待したい気持ちはあるものの、やっぱりラリーはそんな甘いもんじゃない。F1で現役ドライバーに見劣りしないタイムを叩きだしたロッシと言えども、やっぱりWRCでは相当苦労すると思う。
(ちなみに、サーキットレースではトップとの差を計る時に、「ラップあたり●秒落ち」とか言うけど、ラリーの場合は「1kmあたり●秒落ち」と言う。)

オレッチが一番の課題だと思うのはペースノート・ドライビングの難しさだ。ペースノートに従ってドライビングするのは、これは相当の慣れが必要なんだな、実は。
今季でスバル・ワークスをクビ(泣)になるサラザンをはじめ、ペースノート・ドライビングを取得することができずに脱落していった期待の若手ドライバー達は数知れない。
ロッシが好成績を収めて4輪界からも一躍注目を浴びることになったレース・オブ・チャンピオンズは、実はペースノート不要の周回コースだったし、モンツァ・ラリーはモンツァの森の周辺で小ぢんまりと行われる規模の小さなラリーで、ペースノートはさして重要ではなかった。つまりロッシはまだ、本格的なペースノート・ドライビングをしたことがないんだよね。2002年のラリーGBが本格的なペースノート・ドライビングの言わば唯一の実績なんだけど、上述にようにこの時はわずかふたつ目のSSでリタイアしてしまったわけだし。

そんな事情を考えると、やっぱり完走できただけで大したもんでしょ、ということになっちゃうんだよね。やっぱし。


・・・・・と書きつつも、それでもロッシはロッシ。常人には計り知れないポテンシャルを持つ“世界最速芸人”。あるいはペースノート・ドライビングに予想を上回る驚異的な適応力を見せてくれるかもしれない。

ということで、かなり期待含みのオレッチの独断と偏見全開予想はこうだ!

レグ1は慎重な滑り出しでPCWRC勢(ほぼ市販車のマシンで争うクラス)にもやや遅れを取るぐらいのペース。レグ2に入るとペースノート・ドライビングに慣れてきて少しペース・アップ。PCWRCの中位グループあたりと調子良くポジション争いしたものの、調子にのりすぎてクラッシュ。マシンは小破で済んだもののトラブルを抱えてペースが落ちる。最終日、レグ3は完走目指して再び慎重にアタック。それでもリタイアする車輌が多かったおかげで、最後はPCWRCの上位グループに届くか届かないかの15位前後でフィニッシュ。


う~ん、ちょっと期待し過ぎかな?





速報!

レグ1はグロンホルムがヒルボネンに31秒差をつけてトップでフィニッシュ。
そして我らがロッシは、トップのグロンホルムと約11分差の24位でレグ1を終了。
グロンホルムとは1kmあたり5秒弱の差か。
思ったよりやるなぁ~、ロッシ!

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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com
ウォーター・スプラッシュも経験。きっとマシンの中でウヒャウヒャ言って喜んでんだろうなぁ


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Photo © DPPI / www.Rally-Live.com

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by oretch | 2006-11-17 23:12 | MotoGP

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