WGP最高峰クラスに、史上2番目に若い王者が誕生した。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA ※ 【MotoGP】第15戦日本GP レビュー(前編)からの続き ■ Race Review (続き) レースは12周目に突入した。間もなく折り返しだ。 ロッシが2位ストーナーとの差を1秒にまで詰めてきた。メランドリまでは約3秒。 メランドリ、ストーナーはBS、ロッシはミシュラン。これまでBSに対して劣勢を強いられてきたロッシだけど、ウェットからドライに変わりつつある現在の微妙なコンディションでは、むしろミシュランの方に分があるようだ。 Photo © Bridgestone / Motorsport.com ヘアピンを過ぎてバックストレート。ロッシがストーナーの真後ろに迫った。 90度コーナーへのブレーキングでロッシがストーナーのインを突く。 オーバーテイク成功。ストーナーの前に出た。 前を行くメランドリとの差は約2秒。ペースはロッシの方が速い。たぶんあと1、2周で追いつける。 でも問題は、後方のドライ・タイヤ組の追い上げだ。さらに勢いを増して先頭グループに迫ってきている。 8位のカピロッシは55秒台、12位のギュントーリは54秒台にまでラップタイムを上げてきた。カピとトップのメランドリとの差はまだ40秒ある。でも、ラップタイムは1周あたり5秒近く速い。このままだと、こちらもあと7、8周で確実に追いついてくる。 ヤマハもドゥカティも、ピットでは後方の異変にとっくに気付いている。いつライダーが飛び込んできてもいいように、すでにスペア・マシンのエンジンに火を入れて待っている。 なのに先頭グループはまだ動く気配が無い。ストーナーはロッシを、ロッシはメランドリを追いかけて、そのまま13周目に突入した。 Photo © Yamaha Factory Racing Team 刺す! Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA 鮮やかなオーバーテイク。次のターゲットは先頭を逃げるメランドリ。勢いはロッシにある。 Photo © DPPI / www.mot-Live.com でも後方からは、カピロッシが猛烈な勢いで追い上げてきている。 上位陣はどのタイミングでピットに入るのか? Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA レインタイヤのまま苦しいライディングを続けるロッシとストーナー。もしかしたら2人とも、後方の動きにまだ気付いてないのか? うんにゃ、そんなことは無い。路面がもう十分に乾いていることは分かっているはず。二人のことだから、恐らく後方の動きもすでに察知しているはずだ。 なら、なぜ動かないのか? ストーナーは無理して自ら動く必要は無い。タイトルはもう目前。ここで決まらなくても、次で決めればいい。マークしなければいけないのはロッシただ一人。ロッシの動きに合わせて自分も動けば言い。 でもロッシはそういうわけにはいかない。このレース、絶対にストーナーの前でフィニッシュしなくちゃいけない。ほとんど乾いたとは言え路面温度はまだ相当低く、マシン交換後にドライ・タイヤがどんなパフォーマンスを発揮するのか予測がつかない。もしドライ・タイヤが“ハマれば”、先に動いた方がチャンスは広がる。でも、もし“ハズせば”、せっかくのリードがフイになる。今季ミシュラン・タイヤのパフォーマンス不足に散々悩まされてきただけに、どちらのリスクを取るか、今ものすごく葛藤しているに違いない。 苦しいのはロッシの方だ。 苦しいのはロッシの方。 Photos © DPPI / www.Moto-Live.com レースは後半戦に入った。ラップを重ねるごとに、マシン交換のタイミングが難しくなっていく。 先頭グループが最終コーナーに差し掛かる。ピット入り口が目前に迫る。ロッシは入るのか? ストーナーはどうだ? 世界中が固唾を呑んで2人の動きを凝視する。 ・・・・・入らなかった。トップの4台は、そのまま14周目に突入した。 急速に接近してくるドライ・タイヤ組との差はもう30秒を切っている。あと5周もすれば確実に追いつかれる。車載カメラに映し出されるロッシのリアタイヤはもうボロボロだ。このままレインタイヤで最後まで走りきるオプションはもうあり得ない。どこかのタイミングでマシンを交換するほか無い。 TV解説の辻本サンの「もう手遅れだ!」という声が聞こえる。 まさか、もうマシン交換を諦めて、このまま最後まで走りきるつもりなのか? Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA 14周目のバックストレート。ロッシがメランドリとの間合いを詰めた。ストーナーはやや離れた位置を走っている。 90度コーナーを立ち上がってトンネルを抜け、続く左ターンの13コーナーでロッシがラインを外してメランドリのインを突いた。 オーバーテイク成功。ロッシが遂にトップに立った。 と、その直後、ついにメランドリがピットロードに飛び込んだ! 最終コーナーをロッシが先頭で立ち上がる。後ろを振り返る。誰も居ない。もう一度後ろを確かめる。するとペドロサの姿が見えた。 ストーナーがいない! ストーナーもピットロードに飛び込んでいた。 先に動いたのはストーナーだ! 遂にここで判断が分かれた。ロッシよりストーナーが先に決断した。レインタイヤのまま15周目に突入したロッシは、少なくともあと1周はレインタイヤのまま走り続けなければいけない。 ボロボロのタイヤで走り続けるロッシの30秒後方で、マシン交換を済ませたストーナーが8番手あたりでコースに復帰する。 ロッシもこの周の終わりにピットに飛び込むことは間違いない。コース復帰した時に再びストーナーの前に出るため、ボロボロのレインタイヤでプッシュする。 果たしてこの1周の差が吉と出るか? 凶と出るか? その直後、メランドリがピットロードに飛び込んだ。 Photo © Team Gresini / Motorsport.com メランドリに続いてストーナーもピットイン。先に動いたのはストーナーだった。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com ストーナーの動きを読めなかったロッシ。 ストーナーの前でコースに復帰するために、この1周を限界ギリギリでプッシュする。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA レインタイヤで最後の1周を走り終え、15周目終わりにロッシがようやくピットロードに飛び込んだ。 ロッシに続いていたペドロサは、ピットに入らずレインタイヤのままコースに留まった。そして直後に最終コーナーで転倒。ペドロサの判断は裏目に出た。ペドロサ涙目 ('A`) ロッシがピットロードを制限速度でノロノロと進む。後方からはカピロッシがグングン迫ってきている。もどかしい一瞬。 ヤマハのピットガレージ前にロッシがようやく辿り着いた。慌しくマシンを交換すると、再びピットロードへ飛び出していく。そのロッシを、デスモセディッチのエキゾースト・ノイズが追い抜いていった。カピロッシだ。 ロッシがピットロードからコースに飛び出す。ロッシの前後に他のライダーの姿は見えない。ストーナーの前に出られたのか? それとも後ろか? ロッシがタイヤのグリップを確かめるように慎重に1コーナーにターンインした直後、エリアス、ド・プニエ、ギュントーリに続いて、ストーナーがようやく最終コーナーに姿を現した。 ストーナーの前だ! ロッシの執念が、ストーナーのツキを上回った! 急いでマシンを乗り換えて、再びピットロードに飛び出していく。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com ロッシがピットに入っている間にトップを奪ったカピロッシ。カピの茂木での強さは異常。 Photo © motogp.com 一足先にマシン交換を済ませたストーナーは8位でコースに復帰。 ロッシを逆転すべくアウトラップを攻める。 Photo © Ducati Corse / Motorsport.com 果たして前に出たのはロッシだった。 残り9周。ストーナーの戴冠阻止に向けてラストスパートだ! Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA ストーナーに1周遅れてピットに飛び込んだロッシが、ストーナーの前でコースに復帰した。まるでF1のピット戦略のようなスリリングな一瞬。 タイヤの温まっていないロッシは、エリアス、ド・プニエ、ギュントーリに立て続けにパスされて5位までポジションダウンするが、それでもストーナーの前はキープしている。このままフィニッシュすれば、ストーナーのタイトル決定は次戦にまで持ち越される。 _ ∩ ( ゜∀゜)彡 ロッシ!ロッシ! ⊂彡 日本GPでの初のタイトル決定が流れるのは残念だけど、やっぱりまだまだ2人の戦いを楽しみたいからね。ストーナーには悪いけど、このレースはロッシがもらったよ! アドリアーナごめんねwwwwwwww と こ ろ が、 アウトラップの1周を終えると、なぜかロッシが再びピットに入ってきた。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com なんとロッシにトラブル発生! ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン!!!! コース復帰直後の16周目、ロッシは変えたばかりのマシンのフロントタイヤ周辺に異常を感じ取った。 逸る気持ちを必死に抑えながら慎重に1周を走り切ると、マシンをチェックするために再びピットイン。メカニックが急いでフロントタイヤ周辺を確認する。でも何も異常は見つからない。 結局ロッシは何も問題が解決しないまま、ただタイムを大きくロスしただけで再びコースに戻る。 それでも、まだ依然としてフロントの違和感が拭えないロッシは、バックストレート・エンドでブレーキングをミス。痛恨のコースアウト。この間に次々と後続車がロッシを追い抜いていき、コース上に戻った時には15番手にまで落ちていた。 このドタバタの間にストーナーはロッシを逆転。 その瞬間、ストーナーの初タイトル獲得と、ロッシのタイトル奪還失敗が確定した。 ロッシもうボロボロ ・゚・(つД`)・゚・ 結局何も解決しないまま再びコースイン。大きくタイムをロスしてしまった。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com さらに、コースに戻った直後のバックストレート・エンドでコースアウト。 ロッシのタイトル奪還の可能性は完全に費えた。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com ロッシの脱落で、もはやタイトルに向けて何の障害も無くなったストーナー。 無理に前を追うことはせず、6位のポジションをキープして残りラップを消化する。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA タイトルの行方に決着が付き、それまでの緊張が解かれたコース上を先頭カピロッシが快走する。2位には序盤の脱落から見事に復活したド・プニエが続き、エリアスとギュントーリが3位のポジションを争う。 ボロボロの状態のロッシは13番手を単独走行。その半周先を、栄光の瞬間に向けてストーナーがクルージングしている。 TV画面が、ドゥカティのピットガレージにいるアドリアーナを映す。ストーナーの両親と手を繋いでモニターを見上げるその顔には笑顔がみえる。 程なくして歓喜の瞬間はやってきた。 Photo © DPPI / www.Moto-Live.com ピットガレージで固唾を呑んで見守るストーナー・ファミリー。 アドリアーナちゃんやっぱかわええ。 Photo © Col Panic / SUPERBIKEPLANET 既に敗北が確定し、淡々と残りの周回をラップするロッシは、胸中に何を思う? Photo © DPPI / www.Moto-Live.com 最初にフィニッシュ・ラインに飛び込んだのは、鮮やかな逆転劇を演じたカピロッシ。3年連続で日本GPのファースト・チェッカーを受けた。 2位には、これが初表彰台となるド・プニエが入り、3位にはギュントーリに競り勝ったエリアスが滑り込んだ。 そして、カピロッシがフィニッシュした30秒後、もう一台の真紅のデスモセディッチGP7が最終コーナーに姿を現した。 その名も“ヴィクトリー・コーナー”を立ち上がったストーナーは、その瞬間を味わうように、ゆっくりとウィリーでフィニッシュ・ラインを通過した。 新チャンピオン誕生。 15戦中8勝の圧倒的な強さで今季を制した新世代のチャンピオンだ。 おめでとうストーナー! そしてさらにその40秒後、ロッシが静かに13位でチェッカー・フラッグを受けた。 お疲れさん、ロッシフミ。また来年があるさ。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA そしてカピロッシがフィニッシュした30秒後、遂にその瞬間がやってきた。 フロントを高々と持ち上げたストーナーが栄光のチェッカーを受ける! Photo © Wolf Jey / SUPERBIKEPLANET 15戦8勝。他を圧倒する堂々とした成績で、史上2番目に若い新王者が誕生した。 おめでと━━━━(゜∀゜)━━━━ !!!!! Photo © Ducati Corse / Motorsport.com ■ Rider’s Comments まずはレースを制したカピロッシから。 優勝:カピロッシ「朝起きて雨が降っているのを見た時には、これは大変な1日になるぞとつぶやいていました。 レース中盤あたりから先頭グループをガンガン追い上げてる時はきっと楽しかったろうな。今季はエースとしてタイトル獲りに挑むはずが、ストーナーに立場を完全に取られてしまって忸怩たる思いもあったろう。カピには心からおめでとうと言いたい。 Photo © Col Panic / SUPERBIKEPLANET そして、このレースの真の主役の2人のコメント。 6位:ストーナー「レースの序盤はとても順調でした。でも路面が乾き始めたためにレインタイヤの消耗が激しくなり、バレンティーノとダニに交わされてしまいました。 なんだ。戦略とかじゃなくて、単にピットからのサインだったのね。 でも難しいコンディションの中で、相当のプレッシャーを感じてただろうに、それでもちゃんとやるべきことをやり遂げたっていうのは、それだけで素晴らしい。 一方ロッシは、 13位:ロッシ「スタートで出遅れてしまったものの、路面が乾いていくにつれてペースが上がり、トップとの5秒差を縮めることができた。メランドリをパスしたあとピットに戻ってマシンを交換したが、どうやらこれが1周遅かったようだ。それでも作戦は決して大きく間違っていたわけではない。というのもコースに復帰した時に前にいたのはロリスだけだったのだから。 ロッシの言う通り、あのマシン交換のタイミングは結果的に正解だった。それでも敗れたのは、またしてもタイヤだったわけだ。 糞ミシュランざけんな!( #`Д´)=〇) ゜Д゜)・∵; ; 来季はロッシがきっと逆襲してくるはず。これからは老獪さや狡猾さも身につけないとね。 Photo © BS / Motorsport.com 天国から地獄。 まるでロッシの今シーズンの全てが凝縮したようなレースだったな。 Photo © Yamaha Factory Racing Team そして、遂に決ったワールドチャンピオンについて、喜びの言葉と敗戦の弁。 新ワールドチャンピオン:ストーナー「ちょっと今はまだ本当なのか信じられない気分です。言葉に困りますね・・・この気持ちを表現しようにも他に似たような言葉が何も見つかりません。でも明日以降、時間が何日かたてば、恐らく自分の中でも初めて実感する事ができるようになると思います。 あれだけ勝ちまくって余裕でシーズンをリードしてきたのに、それでもやっぱり「信じられない」という言葉が出てくるあたり、やっぱりワールドチャンピオンって言うのは特別なんだな、と思う。 いろいろ書きたいことはあるけど、それはまた別途、初戴冠までの道のりを記事にまとめた時に書くとして、とりあえず今は、 ケーシーおめでと━━━━(゜∀゜)━━━━ !!!!! <これで3回目ぐらい? 3月のシーズン・プレビューで「優勝を争えるレベル」なんて見くびったこと書いてすみませんでした。 Photo © Ducati Motor Holding S.p.A. 暫定ランキング2位:ロッシ「今週末のことは本当に残念だった。ドライではストーナーよりも速かったので、チャンスはあったはずなのだが…。 どっかで読んだんだけど、ロッシは早くもストーナーに心理戦を仕掛けてるんでしょ? で、ストーナーからストレートに「セテみたいになりたくないんだけど」って言われたとか(笑) そんなことがあった(らしい)のに、こんな爽やかなスポーツマンらしいコメントを残すところがロッシらしいところ。 ロッシは健在だ。来季もまた2人のガチンコ勝負が期待できそうだ。 遂にロッシにとって生涯最強のライバルが現われたのかもしれない。今季のストーナーの走りは、そう思わせるぐらいに力強く、素晴らしかった。今季の強さがホンモノかどうか来季は真価が問われることになるけど、きっとストーナーはホンモノであることを証明してくれるはず。 来シーズンはWGPの歴史に残る最高のバトルが繰りひろげられる予感がビシビシするぜ! それはロッシ自身が一番分かってるはず。来季はきっと修正してくるだろう。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA アゴスチーニとヘイルウッド、ロバーツとスペンサー、レイニーとシュワンツ。 WGP史に残る偉大なライバル物語に、この2人が新たな章を加えてくれるかもしれないね。 Photo © CRASHNET / Yahoo!ITALIA 間違いなく、今、世界で一番幸せなカップル。ちくしょー! 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| 2007-09-30 02:57
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