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2006年 06月 16日
【MotoGP】第6戦 イタリアGP レビュー その2
■ロッシ反撃の狼煙は上がったのか?

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イタリアGPで待望の復活勝利をあげたロッシ。
Photo (C) Associated Press / Yahoo!ITALIA

優勝 V・ロッシ
「僕の全部のレースキャリアのなかでも最も厳しいバトルだったよ。
好スタートを切ってセテをパスしたあと、そのまま逃げたいと思ったんだけど、できなかった。ロリスが追いついてきた時には、大変な戦いになるとすぐにわかったよ。だからまずは先に行かせてついて行くことにしたんだけど、彼の後ろにあんなに大勢のライダーが迫っていたとは…。それがみんな前へ行っちゃったんだ!で、一気に5位まで落ちてしまったもんだから、すべては最初からやり直し…。
本当に見応えのあるいいレースになったと思う。そして最終的には、異なるメーカー、異なるタイヤ、でも同じ国のふたりの戦いになったことは素晴らしいよ!これはモーターサイクル・スポーツ全体にとってもいいニュース。
最後の2周は息もできていなかったんじゃないかと思うほどだけど、最後までやり遂げることができて本当に嬉しい。今晩はチャンピオンシップのことは考えず、今日のこの一戦だけを思い出すだろう」
(ヤマハ発動機レース情報より抜粋)

ロッシがようやく今季2勝目。表彰台に帰ってきた。ヘイデンが3位、カピも2位に入ったから、縮められたポイント差は僅かだったけど、それでも縮められたことには変わりない。もしロッシがこのまま勝ち続けられれば、たとえヘイデンやカピがずっと2位で追ってこようと、あと7戦で逆転できる。残りは11戦。それだけあれば、ロッシなら十分過ぎるくらいだろう。

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ラスト2周のスパートは見事の一言。地力が違う。
Photo (C) Yamaha Motor Co.


・・・って、ホントにそうかな?




確かに去年までのロッシの強さを考えれば、残り11戦もあれば30点少々の差ぐらいアっと言う間に取り返せるとは思う。でも本当にロッシは去年までのあの圧倒的な強さを取り戻したのかな?

ムジェロはコース特性からしてどうしても接戦になりやすく、過去4年はいずれも僅差の勝利だった。だから、それから考えれば最後にカピロッシを突き放した終盤の強さは素晴らしかった。フランスGPではリタイアする直前まで2位ペドロサに3秒以上の差をつけていたし、ポイントはともかく、現時点で実力ではトップの位置に戻ってきたのは間違いない。

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予選でも今季初のフロントロー。調子を取り戻したか?
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


でも、ライバル達との相対的な強さという点では、去年までの圧倒的な差はまだ取り戻せたとは到底思えない。と言うか、多分もう今後も期待でき無いと思う。なぜならこのところのライバル達のポテンシャルアップが著しいから。

2位カピロッシが最後に失速したのは、スタートに失敗して序盤にタイヤを消耗してしまったのが原因。もしスタートに成功していればカピロッシが勝っていた可能性は結構高いんじゃないか?
3位のヘイデンも昨年までのムジェロでの成績を考えれば大躍進だし、なにより今季の安定感は抜群。決定的なスピードがまだ不足している感じはするけど、ライバル達がドタバタとして成績が安定しない序盤戦で、6戦して5回表彰台に立っている安定感は素晴らしい。
さらに、ロッシより先に今季2勝目を上げたメランドリは昨年以上に確実に力強さを増しているし、もはやルーキーという言葉が似合わない活躍を続けるペドロサもいることを考えると、
たとえロッシが昨年までの強さを取り戻したとしても、相対的なギャップはグっと縮まってしまい、かつての“孤高”と言ってもいい圧倒的なポジションはもはや望むべくも無いと思う。

だから、ポイント計算上はあと7戦で逆転できるとしても、成長したライバル達との力関係を考えると、ロッシがこの先7勝以上できるという計算には無理があるように思える。残り11戦というレース数は決して多くない。
ロッシが追い詰められているという状況は、実際にはまだ何も変わってないんじゃないかな?

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すぐ背後にまで迫ってきたライバル達との距離は、ロッシが一番分かってるんじゃない?
Photo (C) Yamaha Motor Co.


まぁなんだかんだと書いたけども、ロッシには悪いんだけど、ファンとしてはこの状況は実に楽しい。ここ数年ずっと「嘲笑うかのように軽やかに逃げるロッシ」ばかり見てきたから、「ムキになって必死に追いかけるロッシ」というのはこりゃ相当見モノだもの。2003年のオーストラリアGPの時のようなロッシが、シーズンを通してこれからずっと続くってことだものね。
頑張れよロッシ! とお気楽に応援してみたり・・・。

いずれにせよ、次のカタルーニャGPが重要だな。カタルーニャは過去5年間で4勝している大得意のコース。ここで連勝を飾れるようなら、ロッシ逆転のシナリオも見えてくる。でももしガチでライバル達に遅れを取るようなら・・・

少なくともリタイアとか、肩透かしの結果だけは勘弁してくれよ。

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次のカタルーニャGPがこれからのWGPの趨勢を決める天王山になる?
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


ところで、今回の優勝でロッシは遂にドゥーハンを抜いて最高峰クラスの優勝回数歴代単独2位になった。ということは20数年になるオレッチのWGPファン・キャリアの中で、ロッシが遂に記録面では最高のライダーになったということだ。(記憶面ではスペンサー様が永遠に1位なのだ)
ロッシという才能と同じ時代に生きているこの幸せを何と表現したらいいのかしら♪

そう言えば、2003年にロッシがGP通算優勝回数(54回)でドゥーハンを抜いた時のこと。
インタビューでそのことについて感想を求められたドゥーハンは、「オレは最高峰クラスだけで54勝。ロッシは125や250も足して54勝。どこの世界に“F1”と“F3”を一緒にして比べる馬鹿がいるんじゃ? あ~ん?」と、4輪の世界に例えて不愉快そうに応えてた。
さぁて、今回の優勝で最高峰クラスの勝ち星だけでもロッシに抜かれちゃったドゥーハンは、今頃どんな心境かねぇ?

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おっ、ムジェロに来てたんじゃん。で、ロッシとはどんな話したのかな?
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA



■ 打倒ロッシのチャンスをホンダは活かせるのか?

ロッシが反攻の狼煙を上げたのは間違いないけど、でもまだかつての強さを完全に取り戻したわけじゃない。従って打倒ロッシを果たすには、今こそ最大のチャンス。現在ホンダのエース、ヘイデンがカピロッシと並んで99点で実質トップに立ち、残り11戦を残してロッシに34点差をつけている。
3位 N・ヘイデン
「前回のフランスGPが終わった後、ばん回しないといけないと思っていたし、それを実現することができた。今日はスタートに失敗してしまった。それについて言い訳はない。しかし、トップグループで素晴らしいバトルをすることができた。みんな激しい走りだったし、真剣勝負だった。
今日は、最後まで何とか2人を捕らえようと全力を尽くしたが届かなかった。これも言い訳はない。今週は、チームのおかげで、バイクの状態がすごく良くなった。勝てなかったけれど、ここから数戦、得意なサーキットが続くので楽しみにしている。それにしても、そろそろ勝たないといけないね。」
(ホンダWGP情報より抜粋)

分かってるじゃん。そう、確かにポイントを確実に積み上げていくのも大事だけど、それだけじゃぁ足りない。1勝もせずにチャンピオンになったライダーなんて、WGPの歴史で延べ230人を超えるチャンピオン達の中でたった2人しかいない。
チャンピオンになりたければ勝て。勝てなければチャンピオンにはなれないぞ。

それに、今季を逃したら、多分二度と打倒ロッシのチャンスは巡ってこないと思う。

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カピロッシと同点2位に立つヘイデン。ロッシとは34点差。
今季はホンダのエースとして大活躍。
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


来年はエンジンの排気量が800ccに変更になり、MotoGPマシンが生まれ変わる。MotoGPクラス初年度は確かにホンダが他のメーカーを技術的に圧倒したけど、来季のレギュ変更はMotoGPクラス発足時ほどドラスティックなものじゃない。だからどんなに頑張っても、あの時ほどの技術的なアドバンティッジを獲得することはできないはず。となると、当然のごとくライダーの技量が雌雄を決する最も重要な要素になり、抜群の適応力を発揮するロッシが有利になるとオレッチは見る。

ではその翌年はどうか? ロッシが4輪に転向する可能性は決して低くない気がする。もちろんオレッチはロッシに現役引退するまで2輪に留まっていて欲しいけど、どっちに転ぶかはロッシ本人しか分からない。だから打倒ロッシを目指すなら、2008年はロッシ不在と思って、今季に賭けるべきだと思う。

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勝ち逃げだけは許さんぞ
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


ということで、今がまさに打倒ロッシを果たせる最大にして最後のチャンスだと思うわけだ。
もしホンダが打倒ロッシ、ロッシの連覇阻止を本気で実現したいなら、やるべきことは至極単純だ。

現在の戦いの構図「5強+2」の中で、ホンダ勢は「3強+1」を占めている。もし仮に現在ポイントリーダーのヘイデンにチャンピオンを獲らせたいなら、この数的優位を活かして、ヘイデンを他のホンダ勢が一丸となってバックアップすればいい。
もしレース中、「ヘイデン - ペドロサ - ロッシ」の順で走っていたなら、ペドロサはブロック・ラインを走ってロッシのスピードを殺し、ヘイデンを逃がしてやればいい。
もし「メランドリ - ロッシ - ヘイデン」の順だったなら、メランドリはヘイデンが追いついてくるまでロッシをブロックしてペースを下げさせればいい。
もし「ロッシ - ストーナー - ヘイデン」の順だったなら、ストーナーはせめてヘイデンを先にフィニッシュさせて1点でも多くのポイントを取らせればいい。
トップグループの過半数を占めている勢力を確保できているんだから、こうしてホンダ陣営が束でヘイデンをバックアップすれば、かなり高い確率でロッシの連覇を阻むことができるだろう。

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ホンダ陣営が一丸となってロッシ包囲網を作れば勝てる。けど・・・
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


ところが、それができないからHRCとしても悩ましいところなわけだ。サテライト・チームと言えどもグレシーニもLCRも独立したチーム。HRCの思い通りに順位操作はできない。
だけど、もしホンダが本気で打倒ロッシを果たしたいのなら、何よりもロッシに勝つことに拘るなら、そろそろ腹を括る必要があると思う。
それができないなら、ホンダ勢同士が潰し合って最後にロッシが高笑いするという最悪のパターンになる可能性が高い。

さぁ、どうするHRC? このチャンスを活かすか殺すか、HRCの腹一つだな。

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さぁどうしますか? 監督さん。
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


とは言っても、そういう順位操作が無いのが2輪のいいところではあるんだけどねぇ。
今現在はまだヘイデン、マルコメ、ペドロサが横並び状態だからチームオーダーも立てらんないんだろうけど、シーズンが進んである程度差が出てきたら、もしかしたら腹を括って勝負に出てくるかも知んないな。

それともあれか? 90年代初めにあった「カピロッシ防衛隊」の再現できればいいのか?
「カピ坊にタイトル獲らせてやろうぜ!」と、チームとメーカーの垣根を越えて先輩イタリア人ライダー達が結束して生まれた「カピロッシ防衛隊」。あれは何と言うか、その防衛隊を相手にしなければいけないのが我らが日本人ライダー達だったから、多少複雑な気分ではあったけど、でもどこかで感動めいたものも感じたもんなんだけどね。

さて、今、それだけの人望や愛嬌のあるライダーがいたかどうか?

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ペドロサにはその素養があるかも知れんね。
Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


■ ライダー達のコメント・チェック

ロッシとヘイデン以外のライダーのコメントをまとめてチェック。
2位 L・カピロッシ
「スタートには失敗した。かなりハードなタイヤを選択したので最初の数ラップはおとなしくしていたが、その後リズムをつかみ追い上げを開始した。ヴァレンティノとニッキーとのバトルは素晴らしく、3人で何度もリードを奪い合った。ここイタリア・ムジェロで優勝できたらベストだったが、2位の結果に満足している。僕たちのシーズンは快調に滑り出している。」
(ドゥカティ レース情報より抜粋)
スタートがうまくいってたらカピロッシが勝ってた可能性は結構高かったろうな。序盤追い上げでのタイヤの消耗が痛かった。PPのジベルノウも逃げられなかったように、ムジェロは独走しにくいコースだから混戦にはなってただろうけど、終盤の粘りが違ってたはずだものね。
ドゥカティがいいのかブリヂストンがいいのか分からんけど、シーズン序盤が終わってポイント首位。こりゃひょっとしちゃうかもねぇ。
4位 D・ペドロサ
「自分にとって、今日はいいレースだった。結果にも満足している。ここは、本当に疲れるサーキットだし、予選ではトップグループから後れを取っていたからね。最終的に、トップから2秒差でフィニッシュできたことも嬉しい。ムジェロをMotoGPマシンで走るのは、初めてだったし、そういう意味では完璧だった。しかし、決勝レースに向けて、バイクのセッティングは完全ではなかった。特にラスト10周は、かなり厳しい走りを強いられた。今日は、集団の後ろで前の選手たちを見ていた。今度は、テレビでそのバトルを見て確認したい」
(ホンダWGP情報より抜粋)
ペドロサのコメントはいつも「疲れた」って入ってんだよな。やっぱりまだまだ体力的に厳しいんだなぁ。でも最近はそう言えば、「腕が上がった」ってコメントを滅多に聞かなくなったな。2ストと4ストで疲れ方が違うんかな?
「テレビでそのバトルを見て確認したい」なんて、いい心がけだな。君はきっといつかチャンピオンになれるぞ。
5位 S・ジベルノウ
「数ラップだがリードを奪うことができ、良い戦いをすることができた。残念なことにブーツのスライダーが剥がれて、ふたたびレースに集中できるまで数ラップを要してしまった。どうやってデスモセディチから最高のパフォーマンスを引き出すかということがわかってきた。僕はライディングを楽しみ始めたようだ。」
(ドゥカティ レース情報より抜粋)
靴擦れっていうオチはショボかったけど、なんかコメントは力強いのぉ~。ようやくジベルノウも復活するか?
6位 M・メランドリ
「今日は、本当に長く厳しいレースだった。後半、ニッキー(ヘイデン選手)と3位争いをしていたときに、ミスをして6番手までポジションを落としてしまった。地元のファンの前で表彰台にも立てず、いい走りを見せることができなかったのは、本当に残念だった」
(ホンダWGP情報より抜粋)
でもあの根性は買いですよ。あれぐらいアグレッシブなライダーがオレッチは好きだな。なんか最近カダローラっぽい感じがしてきたなぁ、っていうのは褒めすぎ?
9位 玉田誠
「スタートする直前までタイヤの選択に迷った。気温が上がり路面温度が上がったので、最終的に、今回、一度も使っていなかったハードを選択した。結果的に、思ったほど暑くはならず、リアのグリップに苦しんだ。完全に自分の選択ミス。悔しい。」
(ホンダWGP情報より抜粋)
原因はハッキリしてるんだから前向きに前向きに。でもそろそろ、ねぇ・・・
11位 中野真矢
「スタートが良くて、序盤はトップグループにつけることが出来たものの、ライバルにストレートで交わされてポジションを落とした。今回のレースは、現在抱えている課題がはっきりと出たレースだった。コーナーでのトラクション不足。それが結果として、ストレートの車速の伸びにも影響した。しかし、2日目に試したBSの16インチのリヤタイヤがいいフィーリングで、決勝も最後まで持ってくれたという好データが得られた。」
(カワサキ レース情報より抜粋)
ストレート走るたびに1台、また1台と抜かされて・・・。
ライダーは一流。タイヤもドゥカの活躍を見れば一目瞭然。つまり問題はマシンなんだよ。ネガが出た時の解決のスピード感が、カワサキはホンダやヤマハとは明らかに違うんだよな。やっぱり永年GPを離れてたツケがこういうところで出てくるのかなぁ?


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ムジェロの風景その1 Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


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ムジェロの風景その2 Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA


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ムジェロの風景その3 Photo (C) CRASHNET / Yahoo!ITALIA

by oretch | 2006-06-16 22:01 | MotoGP

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